ピストルやライフルのカートリッジ(弾薬)ですが、ブレット(弾頭)の中身は鉛です。
比重が高く(重い)、柔らかく、採掘しやすいという性質から、弾頭は鉛をカッパー(銅合金=真鍮)でカバーしたもの(「フルメタルジャケット弾」と言います)が主流です。
厚生労働省のコラムによると、
鉛は、無機鉛、有機鉛ともに職業暴露や環境汚染によって、造血系、中枢・末梢神経系、腎臓などを障害する。また、鉛は体内に蓄積し慢性中毒として、けいれんや昏睡などの鉛脳症が重大な影響として知られている。幼い子供は、成人と比べて鉛を4〜5倍吸収しやすく、身体からの排泄速度も低い。
とのこと。
人体に亜鉛は微量とはいえ必要ですが、鉛は不要で有害ということです。もう何十年も前からスプレー塗料が水性なのは、当時、油性スプレーには鉛やクロム化合物が使用されていたからでしたよね。
そんな鉛ですが、アメリカの環境保護局(EPA)によると、地面に落ちた鉛の弾丸は、有害廃棄物および固形廃棄物規制で定義されている廃棄物ではありません。
すなわち、地面に落ちた鉛の弾丸は、有害廃棄物および固形廃棄物規制で定義されていないので、EPAは射撃場に対して鉛の除去を求める権限を有していません。
とはいえ、ぶっちゃけ、
気になる人には気になりますよね。
僕も気になったので、算出してみました。
重さ115グレイン(約7.45g)の弾を、1年間に1万発撃ったとします。重量にすると74,500gです。74.9kgです。「年間鉛75kg」って、字面だけ眺めると罪悪感が湧いてきませんか?
でもでもでも、そんなことを言っていたら、飛行機で海外旅行なんか行けなくなってしまいます。
ちなみに飛行機が一人の乗客のために排出しているCO2(二酸化炭素)は、飛行距離1kmあたり102gです。
成田〜グアムの飛行距離は2,522km。
一人当たりの二酸化炭素排出量は、257kgを超えます。
先日、180人乗りくらいの飛行機に6人くらいで乗って、グアムから福岡まで飛びました。この時、僕は「金輪際『エコ』とか言うのはやめよう」と反省しました。
グアム〜福岡の飛行距離は2,669km。
一人当たりの二酸化炭素排出量は、272kgを超えます。
272kgが「満席で飛んだとして」の一人当たりの排出量だとしたら、180人乗りの飛行機に6人で乗ったら(一人当たりの排出量は)30倍の排出量になります。174人が乗っていない分それなりに軽そうですが、ざっくり250kgだとしても、30倍したら7,500kg、7.5トンです。
二酸化炭素は植物の光合成で酸素になるとはいえ、人間が何らかの不自然なことをやっていることには変わりません。そこに訴える活動家たちの言い分も、聞く耳は持っているつもりです。
「環境に負荷をかける飛行機には乗りたくない」と言って、国連の会議に参加したスウェーデンの環境保護活動家のグレタさんが、ヨットで大西洋を横断したのをドキュメンタリーで観たことがあります。当時16歳の彼女の行動は立派にも見えましたが、何か大きな勢力に利用されているような、なんとも切なかったのを覚えています。
これからも野外で実弾射撃を続けたい自分としては、今後一才自然に鉛を撃ち込むことを辞めるというのは、非常に難しいものがあります。
開き直るわけではありませんが、せめて「自分にできることをしよう、ただし他人にエコを押し付けるのはやめよう(今までも押し付けたりしたことはありません)」と、思いました。
にもかかわらず、「地球にやさしい弾で撃とう!」と言う表題は矛盾して聞こえますが、それでもまぁやっぱり地球に優しくできたら気分が良いなと、正直思っている自分がいます(我ながら困ったものです)。
前置きが長くなってしまいました。
「実弾射撃はしたい、でも
鉛を飛散させるのも気が引ける」
といったシューターたちの、
気休めになる弾薬があります。
弾薬の老舗、フェデラル(FEDERAL)が開発した、シンテック(Syntech)弾がそれです。
鉛を使わず、ターゲットに中ると粉砕してしまうコンクリートのような弾頭の弾薬です。紙のターゲットやスティールターゲット(鉄板)を撃つスポーツシューティングやプラクティカルシューティングのための弾薬です。
このシンテック弾は、2015年くらいにはあったと思います。ただ、価格が高かったんです。
そんな高価な意識高い系の弾薬が、CQBグアムの弾薬棚に大量に陳列されているではありませんか?!
オーナーのスティーブさんに聞いたところ、サプライヤーがいつもの弾がなかったのでそれを持ってきたとのこと。
早速、スペックを調べてみました。
フェデラル®アメリカンイーグル™シンテック® 9mmルガー弾は、どちらも弾頭の重さは124グレインですが、「トレーニングマッチ(Training Match)」と「レンジ(Range)」の2種類の弾頭があります。
Federal® American Eagle™ Syntech® 9mm Luger Ammo 124 Grain Syntech Training Match TSJ
インドアレンジトレーニング(IRT)の一環として開発されたこの9mmルガーハンドガン用装弾は、射撃のターゲットや練習に最適です。もちろん練習が現実的でなければ、それは本当の練習ではありません。
シンテックトレーニングマッチは、フェデラルプレミアムパーソナルディフェンスHSTやタクティカルHSTと同等の弾速、弾道、着弾点を提供します。
シンテックトレーニングマッチは、他のシンテック製品と同様、唯一無二のTSJ弾を採用しており、ポリマージャケットを使用することで、金属による汚損を排除し、銃身に有害な熱と摩擦を大幅に低減します。
フェデラル独自のカタリスト™プライマーは、鉛を使用せずに高温で信頼性の高い点火を実現し、シンテック トレーニングは屋内射撃場に最適です。
Federal® American Eagle™ Syntech® 9mm Luger Ammo 124gr Grain Syntech Range TSJFN
フェデラル®アメリカンイーグル™シンテック® 9mm 124gr TSJFN弾は、優れた命中精度と安定した性能を低価格で提供するために設計された、非常に信頼性の高いターゲットおよびトレーニング弾です。
鉛を含まない合成弾丸を使用し、鉛と銅の汚損を排除するために設計された先進的なポリマージャケットを採用し、独自の鉛を含まないCatalyst™プライマーは、厳しい状況下でも信頼性を高めるために、一貫した信頼性の高い発火を提供します。
さらに、この弾薬は、どのような環境でも非常にスムーズな作動を実現するために、再装填可能な真鍮製のケース(薬莢)に装填されています。
今回CQBグアムに入荷したのはトレーニングマッチ弾の方。
「撃ちたかったら分けてあげるよ」
早速、20箱(1,000発)分けていただきましたので、近々、実際に撃ってみようと思います。
普段は115グレインの弾を撃っているので、124グレインの弾頭がうち味にどのような影響を及ぼすか、興味津々です。
箱から出してカートリッジ(弾薬)を撫で回してみたところ、鉛や真鍮のような粘性がないので、ケース(薬莢)が弾頭をほとんどクランプしていないかまったくしていないと思いました。圧入しているだけって感じです。
CQBグアムの実弾射撃ツアーに参加した際、もしもこのシンテック弾が撃てたならば、どうぞラッキーと思ってください(決してエコは押し付けていませんのであしからず)。
興味のある方は、通常の115グレインの弾とシンテック124グレインの弾を、ぜひ撃ち比べてみてくださいね。
「あ、再装弾じゃん」なんて知ったかぶりをするとイタイので、気になる方は遠慮なく聞いてみてください。